夏の終わり

のらりくらりと生きている

セオの存在  光のようなもの

細い体から滲み出る執念。

折れそうな意思。

酒の飲み過ぎだけど、これもいい。

仕事。急に楽しくて。

昔みたいな、自分が壊れそうな感じはもうない。

これでいい。

しばらくは。バランスが取れそうだ。

 

胸が痛む

28歳という年齢

何してたっけ・・15年前

2007年ということは、Listowelで働いていて

永住権を獲得し、学位を取るために大学に入った頃だ。

自分自身の可能性を一番信じていた頃だろうか。

 

28歳の彼女は、全身癌に身体を乗っ取られて

細くて折れそうな腕、痩けた頬をして、

腹部だけが異様に張り出していて

透けるように青白く

何度も嘔吐して

眉間の皺を取るために、

血圧と呼吸を睨みながら、鎮痛剤を投与した。

 

父親の呆然としたような表情と、

母親のすがるような目を

逃げずに受け止めて、

働くことは、とても難しかった。

カリウムの値が高く

吐物を拭き取ってシーツを交換するための体位交換すら

致死的不整脈が起こりそうで怖くて。

思わずスーザンにヘルプを懇願した自分。

最初、ヘルパーさんに頼めばと言った彼女も

状況を理解して手伝ってくれた。

声かけをすると、苦しいだろうにうなずいてくれる。

心が、胸が痛んだ。

 

帰ってきて、しばらく呆然とする自分が居た。

お酒も飲む気にはならない。

ただただ、仕事がリプレイする脳を

休める術を行使せず 時間が流れてた。

ようやく倒れるように眠った。

 

起きて今日 しばらくぼんやりする。

コーヒーを飲んでもスイッチが入らない。

先日頼んだ化粧品が、

配達された途端に盗まれていた、という事実を知る。

もうどうでもよかったので、

覚悟を決めて、代用品を買いに出かけると雪が舞っていた。

今年は随分と降雪量が多い。

食事を乱せないので買い物もついでにする。

 

明日は仕事だ・・

一日でも休日でよかった。

切り替えて進む。

彼女の事は。澱のように抱えていくんだろう。

これまでに出会った多くの患者さんと同じように。

逝ってしまった父と過ごした時間のように。

 

Trauma in Japan

「雨の中道端で倒れている女性。意識がない。橈骨触れない。」

意識レベルは3桁、やや不穏。

自発呼吸はある。促迫はしていない。

なんか浅いなと思うが言語化しなかった。

色が悪い。冷たい。

サチュレーションが取れない。

橈骨触れない。

 

エアウェイは医師に任せて、ラインをとる。

ショックであることは分かっていたので、すぐ2ライン入れる。

胸部レントゲンで多発肋骨骨折と血気胸

Obstructive shock -> Lt side Chest tubeの運びとなる。

だが、呼吸状態が悪いので、挿管後すぐという運び。

挿管の介助にはスムーズにつける

が、何センチで止めたとかが曖昧だった。

固定はトーマスホルダーが断然楽。

 

どんなに輸液しても血圧が上がらないので、

左内頸静脈に14ゲージのサーフローを入れるという荒技。

輸液をポンピングしながら、ノルアド開始。

時間20mlという High dose

クロスを採取しないと、緊急度1の血液も遅れる。

もっと早くにとるべきだった。最初、ツールートとった時にでも。

保存血も取ることど忘れ。(結局取れずじまい)

 

 

CTにて、ノルアドラインが、折れていることに気づく。

ラインがうまく落ちているかどうか、普段ならもっと気にするのだが。

結局、下のラインは固まってしまっていた。

ライン管理がまだまだ下手。

 

戻って輸血開始。

骨盤骨折が疑われ、大量に輸血が必要との判断。

胸腔ドレーン、挿管チューブ、胃管ともに入り過ぎで少し抜く。

ホットラインは組んでもらったが、もう一度復習

 

大量輸血プロトコルは、次々と実施し、輸血袋に番号と時間を書いておき、

捨てずにいれば、記録が楽。

生食についても同じか。もう少し、しっかり追えればよかった。

あとは、呼吸器の設定と観察。

自発がどこでなくなったか。

 

胸腔ドレナージの介助は要復習。

平行交換の仕方。

色々復習できた。手を動かしながら考える、行動する力が

落ちているのと、体力と集中力が続かない自分がいて愕然とした。

 

外科医の墓場

尊敬する脳外科医が著書で語った言葉。

 

「外科医は誰しも、自分の心の奥底に、墓場を持っているという。自分が力を尽くせずに亡くなった患者さんが埋まっている墓場だ。折に触れて、その墓場に独り訪れる。」

 

医療の現場に関わる者は皆、この墓場を持っているのじゃないかと思う。

 

いつもは思い出さないのに。

自分の責任が果たせているのか不安に思う時。

技術や判断がタイムリーに機能しない時。

 

私は自分の心にある墓場を訪れる。

そこには、ラリーという名の男が居る。

黄疸が出て、顔色が悪く、腰と全身の痛みに顔を歪めながら。

「Nurse..help me! It hurts. I feel terrible...」

懇願するように、絞り出すように、そう言っている。

あの時のバイタルも、今もその場いるかのように思い出せる。

 

今日も、墓場に立ち、頭を垂れる。

彼の必死な目を、見つめ返しながら。

問い続ける。

今、必要な力はなんだ。

弱さはどこにある?

努力をしているか、力を、出し切れているか。

どうすれば上手くいく?

 

 

There's no I in TEAM

チームで働くことの大切さを。

日々思い知る。

自分一人ではとても到達できない高みに。

チームではいけるんだなぁ。

決して、弱音を吐かずに。人の悪口は言わず。

しなやかに強くあることは、なんて難しいんだろ。

それでも。

今日も顔を上げて。進むしかないんだ。

 

Days

毎日が寒くて、仕事を中心に時間が過ぎてく。

家探し、なかなか定まらず。

どういうことだろう。

面倒だから二の足を踏んでいるのか。

 

仕事は相変わらず。

自分の中に居る悪魔に踊らされないように、慎重に。

久々に食事が乱れる。

なんて簡単なんだろう。

美味しくもないのに。

脳の快楽センターを刺激するためだけの行動って不毛だ。

しっかりしなくては。

いつまでも若くない。

大人になりきれないまま一生終わりそうだな。

 

春になれば

強い郷愁に胸を打たれて

ルカのことが恋しくなる

 

"pull yourself together!"きっとそう言う。

 

Bad things by Camila Cabello

settle down

今まで、生きてきて。

自分自身の家を持ちたい、そう思ったことはなかった。

自分は根を張っては生きていけない生き物だから。

でもね。

おそらくそういう時期が来ているのだ。

清潔でこじんまりとした。

ホッとできる、帰宅できる場所。自分の場所。

一つくらいあってもいいだろう。

 

安い買い物ではないので、やはりしっかり調べて。

真剣に取り組む必要がある。

最近、仕事よりも仕事以外の家での時間がとても大切。

毎回仕事に、人間に打ちのめされる自分。

離れて自分を見つめる時間の方がよっぽど大切なのだ。

その時間がまた、仕事に、人に、還元されて行く。

 

あ、チーズケーキの焼ける匂い。