外科医の墓場

尊敬する脳外科医が著書で語った言葉。

 

「外科医は誰しも、自分の心の奥底に、墓場を持っているという。自分が力を尽くせずに亡くなった患者さんが埋まっている墓場だ。折に触れて、その墓場に独り訪れる。」

 

医療の現場に関わる者は皆、この墓場を持っているのじゃないかと思う。

 

いつもは思い出さないのに。

自分の責任が果たせているのか不安に思う時。

技術や判断がタイムリーに機能しない時。

 

私は自分の心にある墓場を訪れる。

そこには、ラリーという名の男が居る。

黄疸が出て、顔色が悪く、腰と全身の痛みに顔を歪めながら。

「Nurse..help me! It hurts. I feel terrible...」

懇願するように、絞り出すように、そう言っている。

あの時のバイタルも、今もその場いるかのように思い出せる。

 

今日も、墓場に立ち、頭を垂れる。

彼の必死な目を、見つめ返しながら。

問い続ける。

今、必要な力はなんだ。

弱さはどこにある?

努力をしているか、力を、出し切れているか。

どうすれば上手くいく?